教え tell me – vol.13 感謝について

2015年も残すところあとわずか、年末年始の過ごし方をすでに決められている方も多いことかと思います。子どもの頃は、どきどきわくわくの年末年始も大人のわたしたちにとってはせわしなくあっという間に過ぎてしまう季節ではなかろうかと思います。

私がデンバー仏教会で開教使を勤めさせていただいていた頃の話です。秋から冬にかけて様々な行事が開催されておりました。10月はハロウィン、実際にカボチャでランタンを子どもたちと一緒に作ったり、日曜学校の後に子どもから大人までがそれぞれの部門で仮装大会を開催して楽しんだりしました。そして11月第四木曜日には感謝祭Thanksgiving Day !特に感謝祭は、本来は仏教にはない行事であるはずなのに、デンバー市の聖職者たちがひとつの教会に集まり(毎年持ち回りで教会が変わる)それぞれの宗教の信者さんたちも自由に同じ教会に集まり、聖職者(仏教・キリスト教・ユダヤ教・イスラム教)たちが自由にお経をあげたり、祈りを捧げたり、バスケットに入れた食べ物を配ったり(おかき・クッキー・パン)本当に多種多様な行事をすべての信者さんの前で執り行うことが許された、宗教の隔たりを超えた驚愕の行事でした。

そもそもこの感謝祭の起源は、1621年イギリスからアメリカに移住した人たちがアメリカで初めての収穫を神に感謝し、冬を越す知恵を授けてくれたネイティブアメリカン(先住民 インディアン)を招待して祝宴を催したことに由来しています。この最初の感謝祭の約1年前の9月、移住者たちを乗せたメイフラワー号はイギリスを出発し、苦しい2ヶ月間の航海の末にアメリカに到着します。しかし新天地で彼らを待っていたのは厳しい冬。満足に食べ物もなく、最初の冬を越す間に多くの仲間を失います。そんな彼らは、インディアンの知恵のおかげにより、冬を充分越せるだけの収穫を得ることができたのです。インディアンに感謝を捧げるため彼らを招待し、丸3日間の祝宴を行いました。七面鳥や野菜が並べられ、感謝の祈りが捧げられます。そしてインディアンと手を取りあって歌ったり踊ったり。これがアメリカの感謝祭の起源です。

私たちの住む日本には感謝祭という行事はありませんが、秋初穂という行事があります。これは秋に収穫を終えたお米(初穂)を仏様にお供えをし、自然の恵みや親の恩、そして仏さまのお慈悲に感謝する法要で、現在ではお隣の眞願寺さまにて毎年12月3日に「秋初穂感謝法要」が執り行われております。この感謝の気持ちを私たち浄土真宗では、報恩感謝という言葉でいただいております。それは、自分を生み育ててくれた両親、学ぶ喜びや楽しさを教えてくれた先輩たち、いつも支えてくれる人々、自然の恵みなど、すべてが誰かのご苦労の中に生かされていたのだ、という「おかげさま」の心から出てくる感謝の気持ちであります。

私たちは、普段の生活の中で自分の考えや主義主張を立てて、若さや経済力を頼みとし、生きていると勘違いすることが多々あります。しかし、人は一人では生きていけないものです。生きていけば迷惑をかけ、誰かに頼ったり、頼られるからこそ「ありがとう」の感謝の気持ちが生まれてくるのではないでしょうか。今年もこのおかげさまの心を大切にし、新年を迎えさせていただきたいものです。

合 掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ