「やすらぎ」27号発刊にあたり

安楽寺住職 横湯誓之

慈光照護の下、門信徒の皆様におかれましてはご清祥にてお過ごしのこと大慶に存じ上げます。又、日頃より当寺護寺発展の為に並々ならぬご尽力を頂いていること、重ねて御礼申し上げます。

さて、今年も早いものでお盆をお迎えする時節となりました。本当に月日の経つのは早いですね。

毎年毎年お盆を迎え、感じさせて頂くことは、まずもって私が頂いているいのちは、長い長い時間を経て繋がってくださった、「かけがえのないいのち」なんだということであります。8月1日から全門信徒のお宅へお盆参りに歩きますが、どのお家へ参っても、繋がってくださったいのちを頂いているということを感じさせて頂きながらお勤めさせて頂いていることでございます。本当に私にとってもみなさんにとっても有り難い、尊きことに気づかせて頂けるご縁がお盆という大切な仏教行事ではないでしょうか。

先般5月26日に、ある会の催しで、あの映画「おくりびと」の原作案となった「納棺夫日記」という本をお書きになった富山県の青木新門さんにお出で頂き、講演会を開催致しました。頂いたお話し全てが、首を縦に振るしかない深い内容でありましたが、その中でも特に、私の心に大切な事を刻んで下さったお話しは、今から約30年ほど前までは、この日本では90%の方がご自分のお家で亡くなっていった。私自身も、4歳の時におばあさんがお家で亡くなっています。病院の先生が「ご臨終です」と両親に告げる光景を目の当たりにしました。幼い私には衝撃的な出来事でありました。今ではその数字が逆転し、90%の方が病院や施設で亡くなっている。いのちを閉じていく瞬間に立ち会うことが出来ない世の中になってしまったのです・・・。すなわち、しっかりと「いのちのバトンタッチ」が出来にくい世の中になってしまったのです。昔は栄養失調や流行病で、幼い兄弟や縁のある方が今の時代に比べると頻繁に亡くなっていった。目の当たり、身近な方々がいのちを閉じていく様を目にすることが出来た。それによっていのちを見つめる、本当のいのちの輝きに出遇うことが出来た世の中であった。どうかしっかりと「いのちのバトンタッチ」をして下さい。いのち閉じていく方が、残していく方々へ「ありがとう」というバトンを渡し、残る方々がいのちを閉じていく方へ「ありがとう」という言葉と共にそのバトンを受け取っていく・・・。

今では葬儀も縮小傾向となっておりますが、それはそれとして、何でもかんでも簡素化するのではなく、しっかりと、「ありがとう」と「いのちのバトンタッチ」が出来るよう、日暮らししてゆきたいものだと、心の底から感じさせて頂いたことでありました。

いのちのバトンを受けて生かさせて頂いてる私達です。亡き人を偲び、教えて下さったことを振り返り、手を合わせてみましょう。きっと大切なことに気づかせて頂けるはずです。

南無阿弥陀仏