教え tell me – vol.19 除夜の鐘の思い出

2018年も残すところあとわずか、平成最後の12月となりました。平成生まれときくと、若いなぁと思っていた人たちも30歳代に突入していくわけですから、なんだか感慨深いものを感じます。子どもにとってはどきどきわくわくの年末年始も大人のわたしたちにとってはせわしなくあっという間に過ぎてしまう季節ではなかろうかと思います。

さて私が子どもの頃の年末年始といえば、やはり【除夜の鐘】がメインイベントでした。なぜメインイベントなのか?と言いますと、【除夜の鐘】を108発つく人たちのために大福引き大会を開催していたからです。つまり108人分の景品を用意していたのですが、決してお寺の予算から景品を購入するのではなく、お寺で活動していたボーイスカウトやガールスカウトのみんなでチームに分かれ、町の商店街に繰り出し一軒一軒「【除夜の鐘】に御協力のほどよろしくお願い致します!」と頭を下げて108個以上の景品がそろうまで街中を歩きまわっていたのです。子どもの頃の私は最初、この景品集めがものすごく苦手でした。なぜなら普段はお金を払って購入する品物をただ頭を下げただけでもらうなんて、まるで物乞いじゃないか?と感じていたからです。

あるときそのことを父に尋ねてみると、「おまえは何を勘違いしてるんだ?街の皆さんから布施していただいた景品だからこそ、ありがたいんじゃないか!中にはこの【除夜の鐘】のためだけに豪華な景品をわざわざ用意してくれてる商店街の人たちもいるんだぞ」
父いわく、私利私欲のために景品を集めているわけでなく【除夜の鐘】に集まってくれた皆さんのために、今年も嬉しいこと楽しいこと悲しいこと色々あったけれど、こうして皆で無事に年末年始を迎えることができて良かったなぁ。というただその思いひとつだと。

【除夜の鐘】が鳴り出すと毎年多くのひとたちのこころに様々な思いが蘇ってきます。新しく生まれた命もあれば、さよならも言えずに過ぎ去っていかれた命もあります。思えば、あそこでこんなふうにしていればなぁとか、悔やむことも多々あります。けれども、私たちの人生は一度限りでやり直すことはできないため、なかなか思うように行かないのが現実です。ただやり直すことのできなかった一年でも、一日でも、何度でも見直すことは出来ます。一年ごとに新しく踏み出していく気持ちで新年を迎えたいものです。

往く人も来る人も一期一会、めぐる季節も一期一会

この気持ちをこれからも忘れずに大切にしていきたいものですね。みなさま、本年も新たな気持ちでよろしくお願い致します。

合 掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ