教え tell me – vol.31 年末をむかえて

安楽寺法務員 暉峻康紀

 2024年もまもなく終わりを迎えますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は、パリオリンピックで過去最多となる45個のメダル獲得、ドジャースに移籍した大谷翔平選手や山本由伸選手のワールドシリーズ制覇、日本では横浜の26年ぶりの優勝(シーズン3位から優勝はロッテ以来でセリーグ史上初)とスポーツで盛り上がりを見せる一方、世界ではウクライナ侵攻によるロシアとの戦争の停戦交渉や日本被団協がノーベル平和賞受賞と、少しずつですが穏やかな年に戻ってくれることを願っています。
 さて、私が北米に僧侶として駐在していた時の話です。皆さんは「サンクスギビングデー」(感謝祭)という米国の祝日をご存知でしょうか?ハロウィン(10月)クリスマス(12月)というイベントに挟まれた、11月の第4木曜日に家族皆で集まって七面鳥などのご馳走をいただく行事です。感謝祭の意味は、人々が豊作の収穫期を祝い、自分の「子供」に充実した人生を与えてくれた神に感謝する日だそうです。仏教に関係ないですし、特に私が参加する必要はないだろうなと勝手に思っていました。
 ところが11月初旬、上司が「感謝祭合同法要」の会議に参加するから一緒に行こう! と誘われ、会議に到着すると、なんとそこにはユダヤ、カトリック、プロテスタント等、市内に住む様々な宗教者の皆さんが集合しており、今年の開催場所の決定(毎年、持ち回り)やそれぞれの出し物?の内容を相談をしているではありませんか! 他の宗教者の方ならいざ知らず、仏教がキリスト教の行事に参加するなんてダメに決まってる! と思い込んでいた私は、その場にいた神父さんにそのことをお尋ねすると、「感謝祭は実はそこまで宗教色が強い行事でなく、だからこそ毎年持ち回りで場所を変え、それぞれの宗教者たちが様々なパフォーマンスを皆さんに披露する憩いの場なんですよ。まあ、あなたも気楽に参加してください。」と言われたものの、少し不安を感じたまま法要当日を迎えました。
 法要当日まず驚いたのが、開催場所の教会にそれぞれの信者さんが違和感なく来場していること、そして誰かが皆さんに配膳している飲み物はワインではなく中身はジュースで、籠に入っているのはパンの代わりにクッキーやおかき、ビスケット等が入っており、皆がそれを普通にいただいていたことでした。そして最も気になっていたのは上司が披露するパフォーマンスです。まず初めに会場にいる子どもたちをステージに呼び、日本の「箸の使い方」を教え、最終テストと称し皿の上にある豆を箸を使って移動させたら合格! と子どもたちに遊ばせたこと。そして次に今度は柔道着に着替え、子どもたちに日本の柔道を教えてあげ、最終的には子どもたちにわざと投げられて喜ばせて終了という形でした。日本を紹介した形にはなっているけど仏教を紹介した形にはなっていないのでは?と思っていたのですが、上司いわく「いきなり阿弥陀様の話をしても伝わらないから、まずは日本を知ってもらうことが大事なんです」と今日初めてお坊さんに遇う人もいるはずだから、誰もが知っているようなことから分かりやすい仏教への入口を作ることも大事。また他宗教の人の話を聞くのも大事(勉強)。すべて否定から入るより、みんなが仲良くできるよう壁を無くして隔たりが無い世界が年に一度くらい在っても良いでしょう。と言われたことを思い出し、今尚、戦禍が続く世相を振り返りながら、少しでも平和に近づけるよう普段の私もそうありたいとあらためて感じさせていただいたご縁でありました。
合掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ