教え tell me – vol.33 年末をむかえて PART 2

安楽寺法務員 暉峻康紀

 2025年もまもなく終わりを迎えますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。今年はお米の高騰や熊の出没、日本初の女性の内閣総理大臣の誕生等色々とありましたが、私としてはドジャースの球団初ワールドシリーズ連覇(9度目の優勝) が記憶に残っています。投打「二刀流」でチームを支えた大谷翔平選手やシリーズ最優秀選手(MVP) に輝いた山本由伸選手に加え、救援陣の一角としてギリギリまで抑えてくれた佐々木朗希選手も加わった日本人トリオの大活躍があってこその優勝だったと感じています。特に今、大谷選手の野球のプレーのみならず、それ以外の行動(成功を収めてもなお謙虚な姿勢を崩さず、周囲の人々への感謝を忘れない姿)が日本人としての本質をあらためて私たちに伝えているのではなかろうかと思います。
 さて、私が北米に僧侶として駐在していた時の話です。高速道路で片道4時間かかる田舎のお寺に向かっていた時のこと。高速を降り、そろそろお寺に到着するなあと少し安心し赤信号で止まりました。すると、うっかり携帯に出て「今運転中だから後でかけなおしますね」とすぐに電話をきったときです。私の真後ろにつけていた車の運転手が突然降りてきて私の運転席をコンコンとノックし、窓を開けると金髪で髭をはやしたサングラスのおじさんが「すみませんが、信号が青になったら車を道の脇に寄せてもらえませんか?」と話をされ、なんだろう?と真に受けた私が道の脇に車を寄せると「あんたさっき運転中に電話してただろ?」私「それが何か?」おじさん「運転中に携帯電話での会話は違反って常識も知らないのか?」と強い口調で怒鳴ってきました。なんだこのおじさんは?と思った私は「ところであなた誰なんですか?」というと「俺は刑事だ!待ってろ、今すぐ警察を呼んで違反切符を切ってもらうからな!」と言いすぐに通報。しばらくすると警察車両が到着し二人の若い警官が先ほどのおじさんと会話をしている模様。私はというと涙目で馬鹿正直に切符を切られる覚悟をしていました。数分後、警官のひとりが私のほうにこっそりきて「免許証出してください」と免許証を渡し確認すると小さな声で「お坊さん、もう行っても良いですよ」と言われポカンとする私・・・警官「あの人は根は悪い人では無いんですが、ここではある意味有名な人なんです。ちなみに刑事職はとうに引退されてるから気にしなくても良いんです。
 半分冗談なのにあなたが素直に言うことを聞いたもんだからあの人も後にひけなくて勢いで電話しちゃったんです。ただ運転中の携帯電話は本当にやめてくださいね」と半分苦笑いしている様子。私は、びっくりすると同時にホッと胸をなでおろしました。すると去り際に警官が「でも知らない人に車を寄せろと言われて寄せるのは今後絶対やめてくださいね。世の中色々な人がいるんです。いくら日本人が礼儀正しいにしてもほどがありますからね」
と言われドキッとした1日でした。
 ちなみにその後そのおじさんとあったのですが、私がお坊さんだと分かったこともあってか会うたびに「あの時は悪かったよ。お坊さんだって知らなかったし今ではもう俺たち友達だろ?」とニコニコしながら話しかける姿を見て、出遇う人との不思議なご縁もあるものなんだなあと今では笑い話になった良い思い出です。

合掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ