教え tell me – vol.22 自粛警察

 気がつけば今年も半年が過ぎ、あっと言う間に夏を迎えることになりましたが皆さんいかがお過ごしでしょうか?コロナ禍で自粛生活を余儀なくされる毎日にストレスをため込んでいる方も大勢おられることと思います。そのような中、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、もう少し我慢する必要があるのではないか?と強く感じている方が不自由な生活の鬱憤をはらすため、場所を選ばず他人に自粛を強要してくる【自粛警察】なる言葉も生まれてきました。今回はその【自粛警察】を体験したお話をご紹介させていただきます。私がアメリカのコロラド州に開教使として勤務していた頃の話です。デンバー仏教会を中心に地方5ヶ寺を上司のK先生と2人で担当していたのですが、その中でも、一番遠いアラモサ仏教会に向かっていた時のことです。街中に入り信号待ちをしていたとき・・・前に止まっていた車から髭を生やしたサングラスの白人が不機嫌そうな顔で私の車の窓をノックしてくるではありませんか。窓を開け『どうかしたんですか?』と聞くと『お前は何で運転中に携帯電話を使用しているんだ?運転中に電話したら危ないって常識も知らないのか?ちょっと車から降りろ!』とすごい剣幕で怒鳴ってきたのです。意外なことを言われ驚いた私は『私が運転中に携帯電話を使用していたですって?言いがかりはやめてください。それに仮にそうだったとしてなぜあなたにそこまで言われる必要があるのですか?』と言うと『そうか、そういう態度なら今すぐ警察を呼んでやるからな!ナンバーは控えてあるから逃げても無駄だぞ!』と急に警察に電話したのです。しばらくすると赤と青のど派手なライトのパトカーが到着し、2人の若い警察官が先ほどの髭の白人と何やら外で話し合っている姿を見たとき『こんなことなら素直に車から降りておけば良かったのかな』と私が覚悟を決めたころでした。1人の警官が私のそばまで来て『いやあ大変でしたね、もう行って結構ですよ』と予想外のことを言うのです。なぜ私が不問に処されたのか理由を尋ねると『ここだけの話、実はあの髭の人はこの界隈で有名な元刑事でアジア人を目の敵にしてるんです。あなたのような獲物(外国人)を探すためにここら辺をパトロールしているってわけなんですよ』と、どうやら警察にとって毎度のことようでした。
 自粛警察は世間の暗黙のルールを盾に、彼らなりの正義を振りかざし同調を強要してきます。しかし暗黙のルール(正義)は時代や国、時と場所によって変わり続けていきます。私たちが今、自粛しているのは大切な誰かを守るためにやっているだけで、自粛自体が目的ではありません。不確かなものをよりどころとしてしまいそうなコロナ禍の時代が訪れてきたからこそ、今一度私たち浄土真宗門徒は阿弥陀さまが私たちにかけられた願いを確かなもの(生活の中心)として共にお念仏の人生を歩ませていただこうではありませんか。                           合掌

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