本堂を素通りしてませんか?……お寺での墓参り

 私のお寺には、本堂の裏手に小さな境内墓地があり、門徒さんのお墓が並んでいます。
 そのお墓にお参りするご門徒の様子を見ると、およそ次の三タイプがあります。
 一つは「お墓に参る時は決まって本堂へ上がり、御本尊の阿弥陀さまに礼拝する」。二つ目は「本堂へは上がらないが、外から礼拝する」。三つ目は「本堂は知らん顔で素通りし、お墓だけお参りする」です。
 そして、残念ながらこの三つ目のタイプが一番多いようなのです。
 先日も、お墓参りだけをすませて帰ろうとしていたご門徒に気づき「どうぞ本堂へお上がり下さい」と声をかけたのですが「ちょっと急ぎますので、これで失礼します」とつれない返事…。こちらの願いはなかなか通じませんでした。
 もしお寺にお墓があるのなら、お墓参りの際、ぜひ本堂の如来さまに合掌礼拝していただきたいのです。
 お寺の境内墓地というのは、宗旨宗派を問わない公共墓地とは違い、信仰を同じくする者がそのみ教えの道場である本堂のそばに設けた宗教施設であり、心から敬うご本尊のおひざ元にあるお墓なのです。ちょうど如来さまに抱かれた形でご先祖のお墓があるわけで、これほど恵まれた環境の墓地はないといってよいでしょう。
 この境内墓地にお墓を建てられたご先祖のお心を思えば、如来さまに知らん顔をして本堂を素通りすることはできないはずです。
 きっと、ご先祖は「(お墓があることによって)少しでもお寺に足を運んでくれるように、そして仏縁を深めてくれるように」と子孫に願われていることでしょう。ご先祖が “親心” を込めて用意して下さったせっかくの仏縁を無にしないよう、お願いします。
 さらに言えば、我が家に帰った時でも、また他家を訪れた時でも、親や尊母家の主人にまずあいさつするのが常識です。その点から言っても “まことの親” であり、ご主人である阿弥陀さまにごあいさつするのは、むしろ当然なことでしょう。

ポイント
◎境内墓地は信仰を一にする者が仏縁を深めるためにある。
◎本堂の仏さまに必ず礼拝する。

(本願寺出版社 仏事のイロハより抜粋)
※当寺ではこの境内墓地が納骨堂にあたります。

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