焼香の後 “誰もいなくなった” !…通夜法要で

 葬儀の前夜には、お通夜のお勤めが行われます。「通夜」とは文字通り、近親者や知人が“夜を通して”ご本尊前の遺体のそばに集い、故人を偲びつつ如来さまのお救いを味わう行事です。ですから、勤行が行われる時には参列者も僧侶(調声人・ちょうしょうにん)と一緒にお勤めしていただきたいものです。
 ところが、こうした故人の遺体とともに過ごす最期の夜にもかかわらず、喪主や遺族がまるで弔問者(参列者)とあいさつを交わす場になっていまているケースがあります。
 自宅以外の、例えば町の会館などで通夜・葬儀が行われる場合にしばしば見受けられるのですが、ご本尊前でお勤めしていると、焼香を終えた遺族の方たちが次から次へと席を離れ、入り口近くの“一般焼香”の方へ行って、弔問者一人ひとりに頭を下げているのです。私がお勤めを終え、振り返ってみるとあたりは“もぬけのから”、誰もいません。これでは「仏さまや遺体を放っておいて、何をしているのか」と、つい言いたくなります。
 重ねて申しますが、お通夜は「遺体をそばに、仏法に耳を傾けるため」に行うのであって、弔問者にあいさつをするためにあるのではありません。参列する人も、このことを十分ふまえていただきたいものです。
 さらに、勤行の後にはご文章を拝読し、法話も行われます。それらも参列者一同、静かに聴聞して下さい。
 喪主あるいは遺族の代表者が参列者にあいさつするとすれば、この法要が一通り終わった後にじっくりと行えばよいでしょう。
 以上のことはお通夜に限らず、葬儀においても言えることです。参列者に顔を向けるのではなく、如来さまの方を向くことが肝心なのです。

ポイント
◎お通夜は遺体のそばで仏法を味わう時。
◎参列者へのあいさつは法要後。

(本願寺出版社 仏事のイロハより抜粋)

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