教え tell me – vol.28 キャンプが好きか嫌いか?

安楽寺法務員 暉峻康徳

 コロナ禍も4年目をむかえ5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」となった今夏ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?「5類」に移行したことで様々な施設でのガイドライン運用廃止や、医療提供体制の変更となりましたが、決して感染者数が激減したわけではありません。コロナ禍の三密回避を気にしている人は少なからずおられると思います。ただその中でもここ数年ひそかに「キャンプブーム」に火がつき始めているのをご存知でしょうか? ドラマや漫画(ゆるキャン△)テレビ番組(西村キャンプ場・おぎやはぎのハピキャン)やYouTube(ひろし)どれを見ても楽しそうな雰囲気いっぱいで、人が密集しがちなところから三密を避けてのソロキャンプや家族キャンプで誰もが身近な場所で楽しむことができるんだよ、という風にキャンプへのハードルが下がったことが影響していると思います。
 さて私はというと…コロナ禍前はキャンプに対しあまり良いイメージが無かったのかもしれません。むしろ嫌いだったと思います。それは私の子ども時代の経験が発端です。私の実家では毎週日曜に日曜学校を勤め、その日の午後ボーイスカウトとガールスカウトを父母が指導していました。今思えば父も母も自分の時間を削ってまで尽くしてくれたのは大変なご苦労であったろうと思います。
 ただ当時のボーイスカウトは軍隊式で父の指導は大変厳しいものでした。点呼の声が小さければ「声が小さいっ!最初からやりなおし!」と言われ、誰かがいたずらや不正をすると「連帯責任!この者の班全員精神バット!」とボッコで尻を叩かれたりしたことも度々でした。隊長(父)の言うことは絶対で子どもだった私たちは誰も逆らおうなんて気も無くなるほど。今の令和の時代では到底考えられない様子だったかと思います。実家のため私は続けるしかなかったのですが、不思議と入団した子どもで辞める子はほとんどおらず、なぜだろう?と思い尋ねてみたところ「隊長は子どもだからって決して軽くあつかわず、いつも本気で接してくれるからじゃないかな」と言われました。思えば言葉や態度は大変厳しかったのですが、内容は登山時の野草の判別(食用・医療用)や手旗信号、テント設営時の安全確認や負傷者への対応(骨折・病気)等どれも大人顔負けのものでした。安全に野営し帰宅するまでの時間、あずかった子どもたちに対する責任を考えると厳しくせざるを得ない、ということが大人になってようやく少し理解できるようになりました。
 キャンプの記憶で唯一、良いなと記憶に残っているものがあります。キャンプファイヤーをしたとき、父が「この火を見つめている我々は、もしかしたらもう二度と同じメンバーで集まることができない今日この夜を一緒に過ごしているのかもしれない」と毎回同じ言葉を伝えるのに、ほとんどの子どもが涙目で火を眺めているシーンです。
 令和の時代、闇バイトや殺傷事件が気のせいか増えたような気がします。そしてひとりでスマホ画面の中の光がすべてと思いこんでいる子どもたちもたくさんいます。せっかくのキャンプブームです、その子どもたちにも私たちが子どものころ感じた光を、もう一度なんとか経験させてあげることができないものでしょうか。キャンプが好きか嫌いか?やってみなけりゃ案外わからないものです。
合掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ