“冥土”へトボトボ旅をする…? 故人は仏さまに

浄土真宗のみ教えは「阿弥陀如来より賜る信心一つで、死と同時にお浄土に生まれ、仏さまと成らせていただく」という教えです。したがって、葬儀もこのみ教えに則して行われることは言うまでもありません。故人はすでにお浄土に参られ、み仏となって私たちにはたらきかけて下さっているのです。この点をしっかりと押さえておいて下さい。

なぜこんなことを言うかと申しますと、葬儀には、前項で述べた「死の穢(けが)れ」のほかに「死出の旅路」の発想に基づく風習も、根強く残っているからです。

それによると、故人は死後“冥土への旅”にトボトボと出かけるそうです。そのため、遺族らは旅支度を整えるなど、“旅路(修行)の手助け”をしなければならないわけです。たとえばワラジや脚半(きゃはん)、手っ甲、経帷子(きょうかたびら)といった旅装束を死者に着せたり、枕元には枕団子や枕飯(一膳飯)を供えたりします。これは旅行中の弁当がわりだそうです。

こうして準備万端整えて「さあ、迷わず冥土へ行ってくれ」となるのでしょう。

しかし、先に述べましたように、故人は既にお浄土に参られ、仏さまに成られているのです。

旅をする暇(いとま)もなく、阿弥陀如来のおはたらきによって救いとられているのです。したがって、旅支度をする必要はありませんし、修行の手助けや冥福を祈る必要もないわけです。また当然のことながら魔除けの刀もいりません。

もっとも、こんな風に「必要なし」とばかり言っていると、「では、何もしないのか」と言われそうです。

そこで、遺体の扱い方について申しましょう。まずはお仏壇あるいはご本尊のそば(正面は避ける)に、なるべく北枕になるよう安置します。顔は白布で覆い、手を合わせてお念珠をかけます。

また、納棺の際には体をていねいにぬぐい、清潔な白衣を着せるとよいでしょう。けっして遺体を粗末に扱うのではなく、み教えにそぐわないことをしないまでです。

ポイント
◎故人は死と同時に仏さまになられている。
◎ワラジや経帷子、枕飯、魔除け刀は必要ない。

この記事が掲載されている寺報やすらぎ