一軒に二つのお仏壇が… 仏壇が二つ

昔ならば、何代にもわたって住んでいた家も、近頃では人びとの稼動が激しく、一人住まいであったり、核家族であったり、時には三世代同居であったりと、形がさまざまに変わってきています。
そんな状況ですから、お仏壇のない家も多く、また逆に、一軒の家でお仏壇が二つになってしまうケースもでてきます。

あるご門徒の家でも、はじめ若夫婦が住んでいて、お仏壇があったのですが、そこへおばあさんが同居することになり、おばあさんもお仏壇を持って若夫婦の家にやってきました。一軒に二つのお仏壇が安置されることになったわけです。が、それがもとでいざこざが起きてしまいました。

というのは、ご主人がどこからか「一軒に二つのお仏壇があるのはよくない」と聞いてきて、おばあさんの持ってきたお仏壇を処分しようとしたからです。おばあさんは怒って「私のお仏壇ですよ。勝手なまねはさせません。処分するなら、あなたのお仏壇を…」となった次第です。

家族みんなの心の依り所として、また心の安らぎを与えて下さるはずのお仏壇が、これでは台なしです。
問題は二つあって、一つは“私のお仏壇”とお仏壇を専有化していることです。お仏壇を安置するのは、ご本尊・阿弥陀如来をお迎えするためです。その如来さまは、元来「色もなく形もましまさぬ」のを、我々凡夫に真実を知らせるために“方便”として形を表されているのです。ですから「このご仏壇の如来さま」とか「あちらの如来さま」とか分けるべきでなく、家族が心を一つにして礼拝するものなのです。その意味から「一家にお仏壇は一つ」でよいわけです。

しかし「お仏壇が二つあってはよくない」と、何か悪いことでも起こるように考えるのも間違いです。それにこだわって、人の心を傷つけては何もなりません。要は家族の一人ひとりが如来さまの真実の心を仰ぎ、心安らかに手を合わせる所がお仏壇であるということを忘れないことです。

ポイント
◎お仏壇は一軒に一つでよい。
◎しかし「二つあってはいけない」とこだわるのも問題。