教え tell me – vol.20 お盆を迎えて…

 気がつけば今年も半ばが過ぎ、あっという間にお盆の時期を迎えることになりましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか? 札幌では5月は暑い日もあったのですが、6月はなぜか寒い日が続き、はたして7月には夏が来るのか? と思ってしまう今日この頃です。
 私の実家九州も大雨による被害が続き、特に九州南部では記録的な豪雨に見舞われた方が多くおられたかと思います。被害に遭われた皆様方へ心よりお見舞い申し上げます。
 さて、日本の夏の国民的行事と言えば「お盆」が最初に思い浮かぶかと思いますが、では米国でこの「お盆」に相当するものは何でしょう? 「ハロウィン」じゃないの? と多くのかたがそう思っているのではないでしょうか。私が米国のデンバー仏教会に奉職していた時も10月最後の日曜日に毎年必ず、お寺の会館で仮装大会が開催されていました。子どもの部、少年の部、大人の部とお寺のみんながこの1年間練りに練ったアイデアで仮装をし、ひとりひとりが舞台でそれを披露し、審査員が厳正な審査をし点数をつけるという・・いわゆる○ちゃんの仮装大賞的なもので大変盛り上がる行事です。日本でもハロウィンはテレビの影響もあり、すっかり定着したように思われますが、何のために仮装してるのか? なぜカボチャを飾るのか? 本当の意味を知らずに行っている方が多くおられると思います。
 アメリカのお祭りと思われがちなハロウィンですが、実は違います。今から2000年前、ヨーロッパの古代ケルト人の宗教的なお祭り「サウィン祭」が由来だと言われています。「サウィン祭」とは秋の収穫を祝うと同時にご先祖様の霊をまつり、悪霊を追い払う大事な行事でした。古代ケルトでは10月31日を一年の終わり(大晦日)とし、この日の夜に死者の魂がこの世に帰ってくるという言い伝えがあり、この日だけはこの世とあの世の境目がなくなり、ご先祖様や故人の霊が家族に会いに帰ってくることができると信じられていました。反面、悪霊もこの世にあらわれ悪さをするとも言われていて、そのため悪霊に子供をさらわれたり、悪さをされないよう「仲間」だと思ってもらえるようにゾンビや魔女、吸血鬼など化け物の仮装をするようになったそうです。そしてハロウィンのシンボルであるカボチャの提灯は、あの世からやってきた悪霊を追い払うという魔除けのためと言われています。元々、カボチャではなくカブが使われていたようですが、米国に伝わってからカボチャになったと言われています。
 「ハロウィン」と「お盆」全く違う行事ではありますが、家族や親戚一同がそろってお供え物やお墓参りをしたり、ごちそうを食べたりして亡き人への想いを大切にしたいという心は国や文化が違っても同じではないでしょうか? そして、私たち日本人も、お盆に集まり手をあわせ「今年も元気で良かった」と、互いの無事を喜びながら久しぶりの家族団欒の時間を持つ、その時お盆は単にご先祖さまを偲ぶだけでなく、今年もみんな無事に過ごさせていただきましたという、今を生きる私たちの、命への感謝のご縁ともなるのではないでしょうか。お盆はただ実家に帰省するだけの行事ではないのだなぁとこの機会に感じていただければ幸いです。

この記事が掲載されている寺報やすらぎ