教え tell me – vol.26 縁に遇う

安楽寺法務員 暉峻康紀

 門信徒の皆様こんにちは。今年も半年が過ぎ、ちまたでは連日の猛暑日続きで、夜間も気温が下がらず熱帯夜が続いております。私も帰宅して玄関ドアを開けると、部屋の中から流れ出る生暖かい空気を味わい「なんでこんなに暑いのよ!」と誰も聞いていない愚痴がこぼれる毎日です…。さて、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? あたりまえのように暑い夏も、滝の様に流れる汗と洗濯回数の増加を我慢することが出来れば、まだなんとかしのげる様な気がします。
 けれど冬はどうでしょうか? 先日、某ラジオDJが「北海道の夏は短いから、暑いのもまだ夏の醍醐味って言えるけど」と言った後、「でも今年の冬は地獄だったよね。除雪機購入を決意した冬でしたもん」と道内の方でも考えがガラリと変わるほどの雪だったようです。
 在住14年、北海道の冬を知っている気で、すっかり「道産子」になった気分でいた私も、今年は8年ぶりに車を雪に埋めてしまい、近所の方に救助されたときには申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。しょげた気持ちで寺に戻ろうとしたら今度は寺の境内入り口ですでに埋まっている車が…(除雪業者も間にあわないほどの降雪量)。不思議なことにこういう場面に遭遇した時、必ず思い出すことがあります。
 私が米国のコロラド州で僧侶として常勤し始めたばかりの頃でした。米国史上まれにみる大雪が来るという日、無知な私は天気予報を全く確認せず、いつものように車でおまいりに出かけると、いつもだと沢山の車が走っているのに、なぜかその日に限って全く車が走っておらず「今日は道が空いていてラッキー!」とのんきに運転していると天候が急変し、窓に猛烈な勢いで吹き付ける雪が! ワイパー速度を全開にしつつ、とっさに高速道路の案内看板を見たときにはすべての看板に雪が張りついており、もはや遭難状態。ナビもついておらず、信号も道路標識も見えない中、なんとか高速を降り住宅街に車を止め、一軒の民家の呼び鈴を鳴らすと、驚いたことに即座にドアが開き中に招き入れてもらいました。
 私を入れてくれた老夫婦は、【免許証を見せろ】とか【警察に通報したぞ】等とは一言も言わず、温かい飲み物を施してくれました。犯罪の多い米国ですので、なぜ疑いもなく私を受け入れてくれたのかと不思議に思い、少し落ちついた後に「どうして無条件で私を招き入れてくれたのか?」と尋ねてみると、「昔から親に困ったひとを見かけたら、できるだけ助けてあげなさいって教えられていたから当然だよ」と笑顔でお答えに也、私が天気予報を知らずに出かけたことを謝罪すると「天気を知らなかったことは悪いことではないよ、私だって昨日まであなたのことを全く知らなかった。大事なのは今こうして私とあなたが出遇って知りあえたことではないかな?」と教えられたことを大雪のたび思い出します。
 昨日まで知らなかったことを悔いるより、今知り合えた縁を大切にしていくこと、コロナ禍の今、もしかしたら私たちに必要なことなのかもしれませんね。 合掌

この記事が掲載されている寺報やすらぎ